2019年度 第2回 秋の奨学生研修会を開催

            左から橋場講師と森講師
            左から橋場講師と森講師

 9月3日、古野奨学生の研修会を東京・内幸町の日本プレスセンタービルで開催した。7月に続くもので、学部生29人、大学院生22人の計51人が参加した。

 研修会では、コーディネータ―を務める元上智大学教授の橋場義之氏(毎日新聞社OB)が「ニュースって何?」とのテーマで講義した。橋場氏は大学で教壇に立つに当たって、「ニュース」についての定義を探したものの、「ニュースを完璧に表す定義が見つからなかった」との経験を披露。

 さまざまなジャーナリズムに関する文献などではニュースについて、「現実社会で関心が向けられる情報」やら「人々が新しいと認識する情報」「最近起きた出来事で、ジャーナリズムの規範に基づき集められ、校正された情報で、幅広いメディアを通じてみんなに知らされる前の情報」などと定義されているが、橋場氏は納得できなかったと強調した。

 そこで、自らは①「今」の人々の活動、知識、状況に関する未共有の情報で②世界の変化に関する最新の(時間の経過に伴い更新された)情報―と定義していると説明した。

左から森講師と橋場講師           
左から森講師と橋場講師           

  一方、続いて大宅壮一ノンフィクション賞などの受賞歴があるジャーナリストの森健氏が、「私とメディアー生きるために必要な4つのスキル」の演題で講演した。

 森氏は、これまで様々な取材を通じて思いもよらない発見をした体験を披露。その一例として、東京都内などでの保育園建設への反対運動に関して、建設予定地の周辺住民への説明会では問題が起きていないのに、離れた地域に住む老人が地価が値下がりするなどを理由に、反対の署名運動などで建設計画を頓挫させているケースを指摘。周辺住民でなく、「一人のうるさい老人が元凶となっている」という意外な実情を強調した。

 また、子供のためと思われてきた「ゆとり教育」が、取材を進めたところ、「ゆとり教育の一番最初(の出発点)は、子供のためではなく、教職員組合が休みが欲しい、つまり教員のゆとりのためだった」などと指摘した。

 森氏は、自らのジャーナリストとしての取材活動を通じて、調べる、尋ねる、検証する、書いてまとめるという能力が培われると強調。この4つのスキルは、「実は他のどんな業界にも適応する力を身に付けることでもある」と指摘した。 

  奨学生からは、取材への前準備はどのようにするのか、インタビューにあたってはどのような注意が必要かなどのほか、経済学の論文を提出したが指導教授から提出直後にダメ出しを受けたという学生が、「こういう場合はどうすればいいのか」といった質問が。これに対し、橋場、森両氏は、自らの体験などを踏まえてアドバイスを行った。

 

 この後、プレスセンタービル内のレストランに会場を移して懇親会を開催。これには、奨学生選考委員11人全員が参加するとともに、奨学生のOB2人とOG1人が駆け付けた。OBで東海テレビ入社3年目の菅谷滉さんは、本社のある名古屋で記者として2年間勤務し、7月の異動で東京の営業部に配置されたことなどを紹介しながら、後輩に激励の言葉を贈った。

写真上)森講師と研修生の質疑応答

写真下)山内理事長の挨拶